安倍晋三首相は24日、第2次政権発足からの連続在任日数が2799日となり、佐藤栄作氏を抜いて「連続」でも歴代最長になる。首相は農業を成長産業と位置付けて多くの改革の旗を振ったが、目標通りではない。農業産出額や輸出額が伸びる一方、生産基盤の弱体化が進んだ。7年8カ月の「安倍農政」で農業がどう動いたか、農水省の統計から検証した。
産出額は増 成果を強調
第2次安倍政権は2012年12月に発足。13年3月に環太平洋連携協定(TPP)交渉参加を表明する一方、同年6月に(1)全農地の8割を担い手に集積(2)農林水産物・食品の輸出額1兆円(3)農業・農村の所得倍増──などの目標を含む成長戦略を閣議決定。農業の成長産業化を「アベノミクス」に位置付けた。 その実現に向けた改革として、首相は農地中間管理機構(農地集積バンク)の設立、農協改革、米の生産調整見直しなどを矢継ぎ早に進めた。農業総産出額や、農家所得に当たる生産農業所得は政権発足前より増え、首相は成果と強調する。 だが、いずれも3年連続の増加後、18年に下落。増加した要因も、生産基盤の弱体化による供給力低下で需給が締まり、価格が上昇した影響とみることもできる。改革で成長産業化が進んだ結果とは認めにくい。
農家数急減 軌道修正へ
政権発足前の2倍に増え、首相がやはり成果と誇るのが農林水産物・食品の輸出額だ。しかし、政府は農家所得にどれだけつながったかを説明できていない。「19年に1兆円」の目標には届かず、今年設定した「30年に5兆円」という新目標には、早くも非現実感が漂う。 米生産費の削減、法人経営体数など他の成果目標も、道のりは険しい。担い手への農地集積率は57%に伸びたものの、増加は年1ポイント程度にとどまる。てこ入れのため、農地集積バンク関連法を19年に改正。首相の進めてきた改革が見直しを迫られるようになった。 農業就業人口は7年間で3分の2に急減するなど、生産基盤の弱体化に歯止めがかからない。49歳以下の若手新規就農者は一時2万人を超えたが、直近は政権発足前と同水準。カロリーベースの食料自給率は18年度に過去最低の37%を記録した。 ただ、今年3月閣議決定の食料・農業・農村基本計画では、中小規模の農家も含めて幅広く支援し、生産基盤を強化する方針を打ち出した。首相は6月、食料安全保障の強化に向けた政策の見直しを指示。農政を軌道修正したとの見方もある。 首相の通算在任日数は既に昨年11月、憲政史上1位となっている。健康不安説もささやかれるが、自民党総裁の任期は来年9月。新型コロナウイルス禍が続く中で、農業の成長産業化と生産基盤の強化に道筋を付けられるか。最長政権の真価が問われる。
日本農業新聞
Source : 国内 – Yahoo!ニュース